技術提携によるリングギアの国産化支援を目的に、最初にタイに進出したのは1990年。ビジネスパートナーである自動車部品工業(株)からの申し入れがあり、合弁会社として10%程度の出資比率で設立したのが, Jibuhin Thailand Co.,Ltd. (自部品タイランド)だ。立ち上げ後、早い段階から利益が出て、配当金収入も得られる順調な滑り出しと思われたが、1997年のアジア通貨危機により、タイバーツの価値が半分に急落。外貨借入により、またたく間に債務超過に陥り、翌1998年に増資することで、なんとか事業を継続した。このとき、「為替には勝てない」ことをつくづく味わったと、八代恭宏前会長は回想していた。
また1999年には、当時、ベンダ工業の売上の10%相当を占めていた自部品タイランドへの素材供給の道が途絶えるという苦労も味わった。こうした紆余曲折を経験に変えながら、韓国、中国に次ぐ進出先として選んだ地、タイでの新たな自社拠点の設置を夢に見ていたのが恭宏前会長だ。夢を実現する前に2011年、中国青島で急逝したが、恭宏前会長の想いはベンダ工業内でしっかりと受け継がれ、八代裕次郎マネージングダイレクター(MD)が中心となり、その想いを実現した。